『共犯者』(松本清張著)を読んで ★★★

こんにちは、Frankです。

松本清張の短編を集めた書籍の巻末にある、薀蓄のある
書評を引用しながら、感想を述べさせていただきます。

 ◆

内堀彦介は、成功した、と自分で信じている。・・・
この件(くだり)が好きです。

食器具の販売員をしていた内堀彦介は、旅先で知り合った町田武治と
共に、銀行強盗をした。奪った金を元に、福岡市内で家具店を開いた
彦介は、商売を成功させる。

しかし、そうなると気になるのは、町田のこと。町田が宇都宮で漆器
店を開いていると知った彦介は、業界紙を装い、人を雇って、町田の
動向を見張らせる。

ところが、その行為こそが、彦介を破滅へと導いていく。彦介の生殺
与奪の紐は、彼に握られている。彼がその紐を締めようとゆるめよう
と自在なのだ。

心理的にじわじわと追い込まれていく強盗犯の彦介を見事に表現して
います。これは言わずもがな清張の真骨頂。

わざわざ血なまぐさいホラー的な殺しを書かなくても、人間心理の移
り変わりを描くだけで怖さが伝わります。

「あなた」
「なんだ」〇〇は突慳貪に返事した。
「お茶を淹れたわよ」

この会話以前に、夫婦の不仲やその心模様が詳細に描かれていたなら、
「(・・・まさかこのお茶に何かが入っているのでは・・・)」とな
るわけです。

清張の『共犯者』は、文句無くお薦め本です。

共犯者 (新潮文庫)


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