『会田刈田~英検1級合格を目指す~』~立ち読み(1/3)~

【梗概】
仕事帰りに何気なく買った英会話本『ジョーダン・ヨシタのイケイケ
英会話』を読み進めるうちに、英語学習に目覚めるしがないサラリー
マンの会田刈田。気が付けば同じ本を手にした仲間と英検1級合格を
目指すことに。英会話学校で冗談か本気か分からない学習指南を授か
り、いざ受験を迎える。合格の二文字を手にしたのは誰か?

比較的血液型B型の読者にウケがいいと評判のパロディー小説。総文
字数約45695字、四百字原稿用紙約114枚で鮮烈のデビュー。オヤジ
ギャグだらけのイケイケ小説、ご堪能ください。

※ご注意※
1.この短編パロディー小説は英検®1級合格するための参考書でも
  問題集でもありません。いわんや英検®1級試験の合格を保証す
  るものでもありません。
2.無料の立ち読み[1/3][2/3][3/3]まで読んで続
  きも読みたくなったらこちらから有料版をお求めください。
3.《立ち読み》だからと言って素直に立って読む人がたま~にい
  ますが、座って読んでも特に支障はありません。但し読み進め
  るうちに「まったく面白くね~」とあくびが出始めた方は、立
  ち読みをすると無理して読み進めることができるかもしれませ
  ん。
4.親父ギャグ満載で、真面目な性格の方は途中でキレてしまうこ
  があるので、精神衛生上、決して読まないでください。有料版
  はご自身の責任においてお求めください。

 ◆

 午後七時半過ぎ、玄関のブザーがとぎれとぎれに鳴った。
「ただいま」
 蚊の鳴くような、か細い声。
 会田刈田が定刻の七時半を十分過ぎて、帰宅した。
「あんたかいな。誰か表で屁こいてるかとおもたわ」
 台所で家事をしていた妻の乃代が右舷四十五度に顔を向け、夫を迎えた。
 家賃一万円の安アパート。夫の帰宅確認まで、数秒とかからない。
「お疲れモード学園やね」
「あぁ」乃代は拍子抜けした。
「どないしたん、あんた。いつも笑ってくれるのに」
 乃代は機械的に、刈田のよろよれの背広をハンガーに掛けた。
「はぁ~」大きな溜息が、刈田の口から漏れた。

 会田刈田、三十五歳。四つ年下の妻、乃代と二人暮しである。
 七年前に結婚したが、子供はまだない。欲しくないわけではないが、最近、
二人とも「夜間の作業」が億劫になり始めている。
 私大の文学部を卒業後、零細の広告会社に就職。ところが五年後によもや
の倒産。社長は十名ほどの社員を置いて夜逃げした。
 ――みんなスマン、倒産や。何とか仕事を見つけてくれ
 メモ用紙の横に、事務所の鍵がポツンと置いてあった。
 行く当てもなかった刈田は、スーパーのバイトを始めた。ところが長続き
せず、その後、職を転々とする。
 一年前、畏友の喫茶店のマスターの紹介で、今の勤務先である腕満化学に
入社した。それからは転職することもなく、落ち着いている。
 入社と同時に総務部勤務を言い渡されたが、もっぱら雑用が主で、仕事に
生きがいを見出せる職場ではなかった。とは言え、取り立てて特技もなく、
だらだらとこの一年を過ごしてきた。

 残業が無いことだけが救いの会社。七時半帰宅が日課になっている。
「なんか、入ってるやん」
 乃代が刈田の背広のポケットから、カラフルな表紙の、文庫本サイズの
本を取り出した。
 ――『ジョーダン・ヨシタのイケイケ英会話』(嫁無書店)
 乃代は表紙をチラッと見たあと、プロフィールに目を通した。
「怪しいわ、この人。出版社の名前も<嫁無書店>やで。暗いイメージ丸
出しやん」
 刈田がムッとした。
「いいやんか。ちょっと買ってみただけや」
 カレーの匂いが、四畳半二間の棲家に蔓延している。
 八月二日、火曜の夜。
 刈田はテレビもつけず、黙々とカレーを食べ始めた。
「あんた、カチカチ、カチカチ。スプーンの音、そんなに鳴らさんといて!
ほんま、カチカチ来るわ」
 乃代のベタな駄洒落にも、刈田はまったく反応しなくなった。

 会田刈田が勤める腕満化学は、グローバライゼーションとは全く無縁の、
典型的な中小企業である。本社は大阪のS市にあり、電子部品の半田付け
用の機械を製造している。
 名古屋に営業所があるが、三名の男子営業部員がいるだけで、実に殺風
景なのである。
 社長の二期作造は、高度成長時代を生き抜いた、がむしゃらの突貫小僧。
身長は一メートル六十と小柄だが、身体には凄まじいエネルギーを秘めて
いる。以前は電子部品の国内販売業者、腹黒電気のトップセールマンとし
て君臨していたらしく、その片鱗は二期の反り返った胸に表れている。

 ただこの社長、暇になると決まって総務部の刈田のところにやってきて、
あることないことを具だ具だと喋るのである。
「会田くん。昨日、会社に来る途中、地下鉄の駅前で、外人に話し掛けら
れてな・・・身長はこんなにあったわ」
 二期は右手を思いっきり挙げ、尚且つ背伸びをして見せた。
「それが変な奴で、俺に向かって『ウェア・パンスト、ウェア・パンスト』
って言いよった。俺だって、大学でちょっとは英語をやっていたから分かる
けど、ウェアは<着る>やろ。パンストは<パンティーストッキング>。
<パンストをはきなさい>って気持ち悪いこと言う奴やなあ、と思って、
ノーマインド・ノーマインド、気にするな、って言ってやったわ。そした
ら、何かキョトンとして、どっかに行きよった」
 すると側で黙って聞いていた専務が、銀縁の眼鏡を光らせた。
「社長。最近、変な奴がいっぱいいますから、気をつけて下さいね」
 専務も専務だ。そんな馬鹿げたことを言う外人がいるはずがない。刈田は
開いた口が塞がらなかった。
 とはいえ、まさか社長にそんなことを言えるわけがない。
「社長のリスニング力はすごいですね」
 刈田は思ってもいないことを言ってしまった。

 ◆

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