こんにちは<Frank>です。
連休の真っ只中、久しぶりに角川文庫の『ミステリ・オールスターズ』を手に取り、「これは面白い」と思ったのが、表題作の『完全犯罪あるいは善人の見えない牙』でした。
完全犯罪は可能なのか――。
そんな不穏な問いかけから始まる本作は、完全犯罪を成立させる条件を理路整然と挙げながら、実行しようとする者の心理や落とし穴を見事に描いています。
隠そうとしても隠しきれない自己顕示欲。それは犯罪を犯すか否かに関係なく、人間が本質的に持ち続ける心の弱さなのかもしれません。完全犯罪を目指す人間にとっては、この自己顕示欲が最大の敵になります。
この物語では、ある女性が完全犯罪で夫を殺そうとしますが、最終的に彼女は、24時間、小さな覗き窓から監視される「四畳半の部屋」に閉じ込められる結末を迎えます。
自己顕示欲から完全に解き放たれ、「無」の境地に至った人間だけが、完全犯罪を成し得るのかもしれません。しかし、その境地に至ったとしても、最後には破綻する“罠”が仕組まれている――そう感じさせる作品です。
全体を通じて感じたのは、女性の〈あざとさ〉と、それに惑わされなかった男の〈純粋さ〉。逆説的に言えば、その純粋さがゆえに〈あざとさ〉を回避できたのではないかという印象です。
例として適切か分かりませんが、将棋の世界で女性棋士がなかなか男性プロ棋士と同等の地位に立てない理由の一端を見た気がしました。それは決して女流棋士があざといという意味ではなく、どこまで自らを犠牲にして“無欲”でいられるか――それこそがプロの条件なのでは、と思ったのです。
勝ち負けのある厳しい世界だからこそ、受け入れるべき「痛み」がある。その痛みと向き合い、自分の限界をどこまで引き上げられるか。それが、〈女流棋士〉から〈女性棋士〉へと進化するための要素だと感じました。
完全犯罪と将棋のプロ――一見、無関係のようでいて、実は通底するマインドセットがあるのではないか。そう感じさせる一編でした。
「善人の見えない牙」とは何か? 気になる方はぜひご一読ください。
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