『出口入口』(永井龍男著)を読んで

こんにちは、Frankです。

短編集の巻末にある、薀蓄のある書評を引用しながら、感想を述べさ
せていただきます。

 ◆

――前年の暮から1月2月と、雪らしいものは一向降らなかった。

こんな冒頭で始まるこの掌編は、短編小説の名手と知られた永井龍男
氏の真骨頂と言えます。心臓系統の故障で急逝した部長の通夜を舞台
に、ドラマが始まる。

黒いイメージの通夜を、雪の夜の出来事にして、如何にもありそうな
靴の取り違えから、人間ドラマが作られています。白と黒の世界を見
事に表現した作品です。

サラリーマン世界の、私自身、好きな言い方ではないですが、勝ち組
み・負け組みみたいなものを仕事で鎬(しのぎ)を削っている場では
なく、葬式で出しているところが上手い。

《雪の残骸を蹴散らして疾走する車の窓から、何か黒い物が続けて二
つ、後を追うような形で投げ捨てられた》

この荒涼としたエピローグも中々いいです。・・・只、我侭な私は、
掌編としての、もう一歩突っ込んだ落しどころが欲しかった、といっ
たところでしょうか。

名短篇、さらにあり (ちくま文庫)

 ◆

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