『333のテッペン』(佐藤友哉著)を読んで

こんにちは、Frankです。

短編集の巻末にある、薀蓄のある書評を引用しながら、感想を述べさ
せていただきます。

 ◆

全長三百三十三メートルの東京タワーの塔頂部で男が死んだという一
つの事件は、またたく間にという表現が大げさであるとしても、第一
報から四時間ほどでトップニュースとしてあつかわれた。

東京タワー内にある売店の『たいもん商会』でバイトとして勤めてい
る「オレ」こと土江田と華野の二人が、事件について語り始めるとこ
ろからドラマは始まる。

途中からきわめて漫画的な好々爺の、『たいもん商会』の主人もこの
会話に加わるが、後にその主人も同じ手口で殺害されてしまう。

この主人は殺害される前、土江田と華野にこう言っていた。「そうだ、
二人にも伝えておかないと・・・どうもね、探偵がやってくるらしい
よ」。

主人曰く、最初の事件の調査のために、「東京タワーの偉い人が」探
偵を頼んだと。後に土江田の前に探偵らしき人物が現れるが、不可思
議な発言と行動を繰り返す。そして更に子供めいた体型の女子高生が
売店に――。

土江田が探偵らしき人物と女子高生それぞれに絡む中、新たな真実が
明らかになる。「〇〇〇はすべてを自供しました。・・・動機は『ス
トーリーのない世の中が退屈だったから』だそうです」

ストーリーを通して、土江田、華野、主人、コンビニの店員の北村と
ぞれぞれ個性があるものの、エピローグにもうひとつインパクトが欲
しかった、というのが正直な感想です。

どちらかというとTVドラマ的な終わり方というんでしょうか、社会の
表と裏を直視し、鮮明なコントラストでエピローグを迎えていれば、
プロット全体が映えたかもしれません。

もの書きの人生観のちがいでしょうか。

333のテッペン

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