『レミング』(近藤史恵著)を読んで

こんにちは、Frankです。

書籍の巻末にある、薀蓄のある書評を引用しながら、感想を述べさせていただきます。

私にとってこの作品は、『プロトンの中の孤独』につぐ近藤史恵著書の第二作目。
第一作目と同様に、自転車ロードレーサーの心の内面を淡々と描写しながら、
生きざまを浮き彫りにしています。

感情のたかぶりやドラマチックな展開を抑制した控えめな作風ですが、派手な
仕掛けで読み手の心を揺さぶろうとしない、その謙虚さがいいです。

《世の中にはざっくりと分けて二種類の王がいる。民主主義の王と暴君だ。》
そして、他人に無関心な王というのは存在しえるのだろうか、と続く。

ロードレースのチームに照らし合わせれば、この王とは「エース」のことだと分かる。

前作で暴君として君臨していた久米がチーム・オッジを去り、一匹狼の石尾がチーム
の単独エースになった。横柄に振る舞うタイプではない石尾がエースになったことで、
チームメイトたちはホッとしたが、時間が経つにつれチームに微妙な空気が漂い始める。

石尾は何事にも無関心すぎるのである。そして迎えた二度のロードレースで、
エースの筈の石尾が二度も失速し、棄権する。そこに仕掛けられた罠とは。

「アマチュアならともかく、完走こそが美しいという発想はプロの世界にはない」
「一流選手は、どのレースに自分のピークを持ってくるのかを戦略的に考えて行動する」
等、所々に発せられるリーダー「俺」の思いが、プロフェッショナリズムとは何ぞや
という問いかけを読者に投げかけてくる。

前作に続き、マネジメントの観点からも大変参考になる、ビジネスパーソンにとって
必読の傑作と言えます。

Story Seller〈2〉 (新潮文庫)

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